日本は技術大国、ものづくりが得意な国として世界から評価を得て、製造業が日本の経済成長を支えていた歴史があります。
もっとも、ITなどの技術革新により、ビジネススピードが加速し、多様なニーズが生まれることで、環境変化や時代のニーズをキャッチアップできない企業が増えてきました。
設備の老朽化や技術の陳腐化をはじめ、組織文化の硬直化など、時間を重ねることによって生じる負の側面が目立ち始めているのも事実です。
こうした事態に危機感を持つ経営者や若手リーダーも少なくありません。
スピードが求められる時代にあって、すぐに行動に移し、変革できる企業は今後も生き残りに期待が持てます。
一方、必要性を感じていても、変革に至らず、頓挫してしまうケースも多いです。
この記事では、変革の必要性を感じている経営者やリーダーに対し、過去慣性に負けずに経営を変革するヒントをご提供します。
組織の変革は課題感から
変革の第一歩は、課題感を持つことです。
時代や環境が変化しているから、変わるべき時期だからなど漠然とした問題意識では、組織は動きません。
一人ひとりの従業員が危機感を抱き、変わらなくてはと思うような、課題を明確にすることが必要です。
今の企業にどんな課題があるのか、将来的にも持続的な成長を遂げていくために障害となっているものは何か、どんな変革が必要なのか、じっくりと自社の課題を洗い出して分析をしましょう。
課題感で組織の価値観を揺るがそう
単に課題を共有するだけでは、危機感は十分に伝わりません。組織を変革に向けて動かすには、上から命令して動かすのではなく、従業員一人ひとりが変わらなくてはまずいと感じて、一人ひとりが使命感を持って動き出すことが大切です。
そのきっかけを与えるために、課題感を自らの言葉でアナウンスして共有し、組織の価値観を揺るがすことが大切です。具体的には、社内の会議体や社内SNSを活用する方法などがあげられます。
社内アナウンスだけでなく、SNSやメディアなどを駆使して、社外に対して新たな価値観や課題感を表明するのも一つの方法になります。
社会的な反響を得たことで、従業員の意識が高まることも多い時代だからです。
時間軸と空間軸を活用しよう
現在の価値観を揺るがす方法の一つに、時間軸と空間軸を活用することが挙げられます。
時間軸では、過去・現在・未来の視点を持つことが大切です。
会社が創業されてから現在までの歴史やなぜ、今のような状況にあるのか、過去から現在のことを分析することや将来に向けて成長するためには今何をすべきかと将来から現在の課題把握などができるようになります。
一方、空間軸では、起きている問題の本質はなんなのかを考えることや自分に今求められていることは何かなど自分の役割を考える視点が必要です。
部署での役割、自社関連部門への影響、他システムとの連携、自社と取引先との関係などが空間的な視点です。
目の前で起きている事象だけでなく、影響のある時間と空間の全体像を把握できるようになれば、課題感が根本から揺らぎます。
たとえば、コストのかかり過ぎが課題の場合、製品の各工程の空間分析と時間を費やす工程の細かな時間分析を行うことで、製品と製造工程全体での大幅なコスト削減につなげることができます。
近年よく実践されている、新商品の開発にあたり、ユーザーが製品を使うプロセスを行動分析することで、消費者の潜在ニーズを探る方法も、時間軸と空間軸の両方の視点で考えることの一例です。
変革のためのプロジェクトチーム形成
組織変革を図るには、従業員一人ひとりの意識変革と行動変革が不可欠です。
古参の従業員が伝統や悪習に固執したり、若手社員が面倒くさがったりしていては、組織の固定化された価値観を揺るがすことはできません。
全員が同じ方向を向いて変革に取り組むためにも、経営者やリーダーだけが張り切るトップダウン方式ではなく、下からのボトムアップ方式で組織一丸となって取り組むことが必要です。
そのためには、変革のためのプロジェクトチームを形成し、各メンバーの役割分担を明確にして、課題意識と達成すべき目標を意識しながら、時間軸と空間軸をしっかり念頭において、プロジェクトを推進、達成していかなくてはなりません。
ビジョンの提示
起ち上げられたプロジェクトチームが、変革を成し遂げるためには達成すべき目標や到達すべきビジョンが欠かせません。
どのような企業、組織を目指したいのか、新たに目指す姿(ビジョン)を、経営者やリーダーが、わかりやすい言葉で提示してください。
命令形式のトップダウンではなく、こんな姿を目指しているとビジョンを示し、それを達成するにはどうすれば良いのかを、プロジェクトチームメンバーが自ら考え、チームとして達成していくことが望まれます。
ビジョンの策定方法に関して、こちらの記事でご紹介しています。
成果のアナウンス
プロジェクトチームは目標達成のために、期間を設定し、途中目標を掲げて、課題をクリアしながら、ビジョンの達成を目指します。
ですが、変革は一筋縄にはいきません。
どんなことでも、うまくいかないことやトラブルが発生することや新たな課題が持ち上がることもあります。
しかも、組織変革と並行して、通常業務もこなしていく必要があるため、途中で頓挫する可能性も少なくありません。
途中で挫折せず、壁に直面しても乗り越えながら、目標を達成していけるように、従業員の短期的成果を拾い集め、社内に周知することも大切です。
成果が出たとわかれば、ほかの従業員のモチベーションアップにもつながりますし、成果を手本にすることやさらに見直しながら、より高い成果や効率の良い方法を見出していくことができるからです。
成功事例の継続的な共有
短期的な成果の積み重ねから、途中目標の達成や課題の解決に達成できた際は、成功事例を社内で共有しましょう。
一時的ではなく、継続的に共有を図っていき、それを新たな組織文化として形成していくことが大切です。
過去や現在への固執ではなく、将来につながる成功事例の積み重ねになります。
成功事例を共有するということは、同時に失敗を回避することにつながります。
その成功事例を活用しながら、より優れた成功事例を量産させていくことにもつながるのです。
成功事例が増えれば、各従業員も自信が付き、変革に向けたモチベーションの維持や向上にもつながります。
新たな成功事例の蓄積が、過去にとらわれることや悪しき慣習に立ち戻ることなく、新たな伝統の構築につながり、変革された新しく強い組織づくりにつながるのです。
まとめ
変革を促すためには、組織の各人が一人ひとり課題感を認識することが大切です。
課題感を認識することから、ビジョンの提示、役割設計を行い、成功事例の周知と共有を図っていくことで、過去の伝統などに負けずに変革を進めていくことができるようになります。
課題感を揺るがすには時間軸と空間軸の活用を基本にし、従業員一人ひとりが自らの課題として変革に取り組む意識が持てるよう、トップダウンではなく、プロジェクトチームの形成によるボトムアップ方式で、ビジョンの達成を目指しましょう。
そのプロセスの過程で、短期的成果の周知と成功事例の共有が求められます。
企業の生き残りを図るために、過去の慣習にとらわれず、将来へとつながる組織変革を成し遂げましょう。