世界が取り組む環境問題。日本でも、2021年4月に政府が2030年までに温室効果ガス排出量を13年度比46%削減するという目標を設定した他、2023年10月11日に東証でカーボン・クレジット市場が開設されるなど、大きな注目を集めています。

中小企業においても、”選ばれる会社”であるためには避けて通れない社会の変革といえます。今回は、GX領域において企業の温室効果ガス排出量の削減計画策定から実行を支援している、株式会社グリーングロースの河野社長に「中小企業版GXの進め方」を伺いました。

GX=Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)とは
温室効果ガスを発生させる化石燃料から太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギー中心へと転換し、経済社会システム全体を変革しようとする取り組み。

会社概要

株式会社グリーングロース

コーポレートサイトhttps://greengrowth.co.jp/
代表取締役河野 淳平
設立2022年4月22日(Earth Day  地球の日)
資本金300万円
本社〒151-0053
東京都渋谷区代々木1丁目30-15天翔代々木ビル3階 S-302号室
事業内容① 再生可能エネルギーの導入支援コンサルティング
② 分散型エネルギーリソースの開発・運営

代表取締役 河野 淳平 / Jumpei Kawano

早稲田大学商学部卒。学生時代にミクロネシア連邦ヤップ島を訪問し、サステナビリティを学ぶ。現地の海面上昇の現状を知り、環境・エネルギー分野に関心を持ち始めた。経営コンサルティングを専攻し、スタートアップで社長の丁稚奉公、新規事業の企画・実行に従事。
新卒で再生可能エネルギー開発専業の上場企業、株式会社レノバに入社。新規再エネ発電所の開発に従事。メガソーラー、バイオマス、洋上風力発電の事業企画・最年少プロジェクトマネージャーを務めた。
その後、個人事業主として再エネ領域のリサーチ・コンサルティングに従事。
2022年4月、株式会社グリーングロースを創業。

©︎Green Growth Inc.

今まさにGXは過渡期を迎えている

ーーはじめにGXに関する国や大手企業の動向を伺います。世界的に脱炭素に向かう潮流ですが、今、国や大手企業は何を考え、どんな取り組みをしているのでしょうか。

2020年に、世界の各国に並ぶかたちで日本もカーボンニュートラル宣言を出しました。これに基づき、気候変動対策文脈だけでなく、経済成長の文脈でも政府全体が舵を切り、岸田政権下において、産業全体で脱炭素に向かうGX関連の法案が制定され、企業がGXを推進するための支援制度が多数設けられました。GX関連の官民投資は、今後10年間で150兆円超を目指しており、EUや米国の支援額を上回ります。国はこれだけの投資をしてでも、GX産業を育成しようとしている状況です。
規制の面も並行して整備が進められています。コーポレートガバナンス・コードの改訂を背景としたプライム市場でのTCFDの開示義務化などがその例です。また、日本でもカーボンプライシングの導入が段階的に進みつつあり、排出量取引市場としてGXリーグの運用が始まり、2020年代後半には炭素賦課金の導入も検討されています。まさに今が過渡期であり、準備のタイミングです。

企業での取り組みも始まっています。
私たちは、GXの取り組みには「守り」と「攻め」があると考えています。「守りのGX」は、温室効果ガス排出量の見える化や気候変動リスク管理などの現状把握や制度対応など目下進めるべき取り組みです。また省エネや屋根上太陽光の導入などのエネルギーにまつわる初期的な脱炭素も含まれると考えています。一方で、「攻めのGX」は、自社事業に関連するGXビジネスの創出や設備投資などより革新的な取り組みと捉えています。
大手企業では守りと攻めを並行して行っており、一例として「守りのGX」では温室効果ガスの排出量を削減するためのサプライチェーン全体見直しや改善、「攻め」ではグリーンイノベーション基金を活用した研究開発やGX経済移行債の調達、国内外での再生可能エネルギーへの大規模投資などが挙げられます。

弊社では、GXに取り組むためには「守り」ができていないと「攻め」はできないと考えていますので、どちらも同じくらい大切にしています。「攻めのGX」に注力する際に企業が使用する燃料や電力由来の温室効果ガス排出量が増加しては意味がありません。つまりビジネスチャンスが破綻しないように、守りと攻めのバランスをとりながら中長期的に実施する必要があると考えています。

大手企業との取引には、脱炭素が必須の社会が迫っている

ーー大手企業がGXを伴う変革を進める中、サプライヤーとなる中小企業にはどのような影響があるのでしょうか。

これからの社会では、取引の継続や新規顧客の開拓の際にGXをやっているか、またはやろうとしているかが重要になると考えられます。

大手企業のサプライヤーとなる非上場の中小企業においても、SBT(Science Based Targets)に基づいて温室効果ガス排出削減の目標設定が期待されるようになってきました。大手企業では自社が目標設定後、取引先である中小企業に対しても中小企業版SBTへの加盟や削減目標設定を要請するケースが増え始めています。先進的なところでは、脱炭素の取り組み状況に関する調査票を年1回送るという大手企業もあると聞いています。これをサプライヤーのエンゲージメントと表現していますが、脱炭素に取り組む企業とそうでない企業では今後取引の継続や新規獲得に大きく影響すると考えられます。

©︎Green Growth Inc.

GXは、できることから少しずつ

ーー中小企業がGXを進めるためには、どのように取り組んでいけば良いのでしょうか。

中小企業では、多くの場合、経営者をトップとして、総務や経理部門がエネルギー消費状況を把握していることが多いので、まずはこうした方々が、GXについて理解していただくことから始めると良いと思います。GXに関する情報収集は、環境省がグリーン・バリューチェーンプラットフォームというサイトを開設していますので、こちらが参考になります。様々なガイドラインが公開されていますので、GXに関するお作法や手順を知ることができます。
また、自己学習だけではイメージ湧かないという場合には、各地域の商工会議所でセミナーをやっていることもあります。実際に温室効果ガスの排出量を計算するものや、自治体の省エネアドバイザーと面談できることもあります。有料無料に問わず、様々な情報を収集し、実践することが大切です。温室効果ガスの排出量計算などでは、請求書や数量などのデータや資料が必要になりますので集めておきましょう。

その上で、最初に取り組むべきは、GHGプロトコル(温室効果ガスの排出量を算定・報告する国際的な基準)のScope1〜3の概念に基づいて温室効果ガスの排出量を算出することが重要です。大手企業が中小企業にGXを要請する場合、まずはScope1、2(燃料の燃料や間接的な電力消費に伴う温室効果ガス排出のカテゴリー)に限定した範囲でアクションを求めるケースが多く、商工会議所などからExcel版の算出ツールなどが公開されていますので、活用すると良いと思います。Scope3からは見える化のサービスを提供する企業を活用するなど、できることから少しずつ取り組んでいくのが望ましいです。

把握がある程度進んだら、次は削減に向けて目標設定や実行に着手します。SBT等の国際的なイニシアティブに加盟することや、省エネなどの、わかりやすく難易度の低いところから取り組み、徐々に設備投資など規模の大きなものに取り組むと良いと思います。設備投資の際には、地銀や信用金庫などの金融機関と連携して取り組むことで資金的なサポートも得られる可能性があります。成長投資を行っている金融機関が増えていますので、ぜひご相談してみてください。

見える化するだけでは不十分。どのように実行するか

ーー最後になりますが、御社ではこれまでにもGXや脱炭素を推進するご支援をされていますが、中小企業、特に製造業にはどのような支援が可能でしょうか。

弊社はGX推進の伴走者として実行支援することを強みとしています。
最近では、温室効果ガスの排出量や電力消費量など、企業の現在の状況を見える化し把握できる環境が整ってきています。見える化を支援する会社も複数存在します。しかし、見える化して現状を把握した後どうするかが重要であり、また知識・経験・ノウハウが必要な部分でもあります。弊社ではこの、現状を把握した後の削減計画策定〜実行の部分をご支援しています。

計画策定はコンサルティング支援として、実行はソリューション支援として提供しています。
コンサルティング支援では、排出削減目標の年限設定や国際イニシアティブへの加盟支援、また各年の削減量や具体的な実行内容(省エネや創エネ、証書置換など)の計画策定を行います。お客様の取引先がどこまでの脱炭素対応を求めるのかに応じて計画内容も大きく異なるため、外部環境を意識し、制度への対応など最適な計画策定をサポートします。またソリューション支援では、屋根上太陽光の導入や、環境証書の代理調達、電力メニューの切替やコーポレートPPAなどをご提案しています。

お客様の状況に応じて、現状把握や数値の見える化もご支援できますので、お気軽にご相談下さい。

©︎Green Growth Inc.

最後に

今回は、GXの計画策定から実行を支援する、株式会社グリーングロースの河野社長にお話を伺いました。社会の変化に合わせ、”選ばれる企業”に変化するためにはGXの取り組みはなくてはならないものとなっています。GXに関するお悩みがありましたら、ぜひ同社までご連絡ください。

また、脱炭素経営を実践する企業の事例について、環境省が事例を公表しています。資料の112ページから、「脱炭素経営に取り組むことで得られるメリット」が紹介されていますので、よろしければご参照ください。