サプライチェーンとは
サプライチェーン(supply chain)とは、原材料の調達から製品が生産されて消費者に届くまでの物流プロセスのことです。
サプライチェーンの考え方は、第一次産業革命時代に、ブーズ・アレン・ハミルトンが提唱して世界中に普及したといわれています。
ERPとは
ERPは「Enterprise Resource Planning」の略で、経営資源計画という意味の言葉です。
経営資源とは、「ヒト・モノ・カネ・情報」のことで、経営資源を合理的に活用して企業は利益を上げています。ERPは統合基幹業務システムとも呼ばれており、企業経営の根幹でもあります。
SCMとERPの違い
SCM(supply chain management)とは、サプライチェーンの最適化を図る管理手法のことです。
SCMとERPは、経営者にとって重要な経営課題です。本項ではSCMとERPの違いについて説明します。
企業経営の基盤構築(ERP)
ERPは、企業の基幹業務の効率化が目的です。基幹業務を効率化するためには、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を有効活用する必要があります。
ERPを導入することで、経営資源の一元管理ができるようになります。
経営全体を可視化(ERP)
経営資源をどのように活用するかということは、最終的に経営者が判断します。経営者が適切な意思決定をするためには、ERPで管理している経営資源の最新情報を活用する必要があります。
そのため、ERPで一元管理している情報は、経営者がすぐに把握できるように「見える化」することが大切です。
物流全体の最適化を図る(SCM)
SCMは、物流全般を最適化するための管理手法です。ERPは企業の基幹業務を対象にしていますが、SCMは物流業務に特化しています。
グローバル化が進んだ現在では、物流コストをいかに抑えるかということが経営課題になっています。
自動車や家電などの製品は、1つの工場だけで完成することはありません。さらに1つの国だけで完成する製品もほとんどありません。そのため、製品原価に対して、物流コストの割合が年々増加する傾向にあります。物流全体の最適化を図ることは会社の利益にもつながります。
物流部分の管理が中心(SCM)
SCMの目的は、物流コスト削減だけではありません。製造業にとって、致命的なトラブルが欠品です。欠品が発生すると製品が製造できません。
低コストで運用できる物流経路を確立しても、生産計画をスムーズに進めるためには、部材の供給能力を維持し続ける必要があります。SCMでは、物流全体の最適化を図る以上に日々の物流管理が重要になります。
SCMにおけるERPの機能とメリット
ERPの機能は、会社の基幹業務の情報を一元管理することです。
ERPのメリットは、情報の一元管理によってリアルタイムに情報の共有が図れて業務効率が向上することです。そして「カネ」の流れも把握できるため、新たな投資に向けた判断ができます。
SCMの情報についても、ERPで見える化することができます。SCMをサポートする基幹業務との連携が強化されるため、SCMの業務効率の改善が可能です。
ERPのパッケージ機能について
ERPは管理ソフトウェアとして提供されています。ここでは、ERPソフトの主な機能について説明します。
会計管理機能
財務状況を把握するために、企業経営には会計管理が欠かせません。企業は会計管理をおこなうことで、「収益性」や「生産性」を把握できます。
会計管理機能は、予算や原価、売掛金・買掛金などの財務状況を把握し、経営戦略の検討材料に活用するために重要な機能です。
販売管理機能
販売管理機能には、見積管理・受注管理・売上管理・請求管理などの機能があります。SCMにおいては、納期管理・輸出入管理・トレーサビリティーの管理が重要です。
特にトレーサビリティー管理は、物流経路上のどこにどの製品がどのくらいあるのかを把握するために必要な機能です。
在庫管理機能
在庫管理機能については、単に在庫を管理するだけではなく、在庫の受払い情報履歴を管理します。受払い情報履歴の管理によって、入出庫処理のミスを防ぐことが可能になります。
また在庫管理機能では、棚卸しをおこなうために在庫品がどのような状態で保管されているかという情報を付加することもできます。
SCMにおける在庫管理は、欠品や余剰品を発生させないために大切なな機能です。
購買管理機能
製造業では、製品を製造するために原材料や部品の仕入れが欠かせません。原材料や部品の調達業務をおこなうのが購買管理です。購買管理機能には、発注管理や支払管理などがあります。
SCMの購買管理には、原材料や部品の仕入れをおこなう取引先管理や、支払価格などを管理する機能が重要になります。
生産管理機能
どの製品をいつまでにどのくらい生産するかを決めるのが生産管理機能です。生産管理で決めた計画を生産計画と呼びます。生産計画によって、作業者の配員や日々の生産数を管理することができます。
SCMにおける生産管理では、必要な原材料や部品を生産ラインに滞りなく供給することが重要です。不良品の発生や設備トラブルなどで、計画通りの生産ができなくなったときは、生産計画を修正しなければなりません。
ERPのパッケージ機能は上記以外にも、人事管理機能・サービス管理機能・プロジェクト管理機能、マーケティング管理機能などがあります。
ERP導入のポイント・注意点
ERPを導入する際は、以下の4つのポイントに注意しましょう。
組織と業務を明確化する
ERPは各部門の情報を一元管理するため、すべての情報が連携した状態になります。裏を返せば、情報の間違いや欠落があるとすべての情報に悪影響が生じるということです。
ERPを導入してから、情報の管理部署が不明になることがないように、各部署の役割を明確にしておきましょう。
業務改善に対応できるシステムを選ぶ
ERPシステムが業務改善に対応できなければ、経営資源の合理化ができません。ERPを導入する際は業務改善に柔軟に対応できるシステムを選ぶようにしましょう。
担当者まかせ、ベンダーまかせにしない
ERPは、経営のためのシステムです。ERPの導入には、経営者が主体的に取り組むことが大切です。担当者やベンダーまかせにしてはいけません。
経営者にシステムの専門的な知識がなければ、第三者のコンサルティングを受けることも1つの方法です。さらに、現場でシステムを運用する担当者の意見を反映させることも重要になるでしょう。
初期費用と維持費用のバランスを取る
ERPシステムは、1度導入すると簡単に別のシステムに変更することができません。
初期費用が安くても維持費が高額だと、経営的な負担が大きくなります。また、システムは数年ごとに保守期限があるので、トータルコストで負担できるシステムを選びましょう。
まとめ
ERPは大企業だけが運用するものではありません。大手企業のサプライチェーンに属している中小企業にとっても、重要なツールといえます。
グローバル化が進むほど複雑なサプライチェーンが形成されるため、企業戦略としてERPを導入して、経営資源の活用やさらなる業績向上を目指しましょう。
(画像は写真ACより)