IoTとは

IoTとは”Internet of Things”の略で、日本語では、”モノのインターネット”と翻訳されています。”モノのインターネットってどういうこと?”と思う方も多いかと思います。モノのインターネットとは、全てのモノをインターネットに接続して、双方向で情報のやりとりをすることです。

パソコンやスマートフォンなどは、インターネットに接続するのが当たり前となっています。しかしパソコンなどは、Windows95が発売されるまで、インターネットに接続していないパソコンがたくさんありました。

パソコンがインターネットに接続するようになると、パソコンの利便性が上がり、会社のデスクの上が変わりました。それまで会社のデスクの上は、紙の書類が山積みになってるのが当たり前で、デスクがきれいな人は、”仕事をしていないのではないか?”とも言われていました。

その後、パソコンが爆発的に普及し、今や一人一台以上のパソコンを使って仕事をするようになりました。
そして、昔のようにデスクの上に紙の書類が山積みになってると、”今どき紙の書類で仕事をしているのか?”と、逆に”仕事をしていないのではないか?”と言われる時代になりました。

このようにインターネットに接続することで、社会は変わりました。IoTでは、パソコンやスマホだけではなく、あらゆる機器をインターネットに接続することで、さらに利便性を上げようとしています。

また、IoTであらゆる機器をインターネットに接続することで、膨大なデータを収集することができます。
いわゆるビックデータです。ビックデータを分析することで、新たなニーズを発掘し、ビジネスチャンスにつなげようとしています。今後IoTで我々の生活がさらに変化していきます。

AIとの違い、関係性

AIとは”Artificial Intelligence”の略で、日本語では”人工知能”と翻訳されています。人工知能については歴史が古く、1948年にアメリカのペンシルバニア大学で、世界初の汎用電子式コンピュータが開発されました。

当時、このコンピュータがいずれ人間の知能のようになるだろうと言われていました。この頃から、現在までに3回のAIブームがありました。

第1次AIブームは、1950年から1960年くらいの期間でした。この時は、コンピュータが開発された直後、さまざまな計算ができるようになりました。しかし計算できたのは簡単な問題であり、複雑な問題が解けないことが明らかになると、研究する人が少なくなりました。

第2次AIブームは、1980年から1995年くらいの期間でした。この頃にはデータベースシステムが誕生していて、データベースに大量の専門知識を詰め込んだ、エキスパートシステムと呼ばれるAIシステムがたくさん普及しました。

しかしデータベースに、大量のデータを蓄積、管理することが大変ということが明らかになると、これらAIシステムも使われなくなりました。

第3次AIブームは、2000年から現在まで続いています。第2次AIブームでの課題であった大量のデータ管理が、コンピュータの発展とインターネットの普及により容易になりました。また複雑な問題を解く手法として、機械学習やディープラーニングといった技術が確立されて、再度AIブームに火がつきました。

これまでの歴史を振り返ると、IoTとAIについては密接な関係があることがわかると思います。

製造業におけるIoTの役割

製造業の生産性向上が求められる現在において、IoTの役割は大きいです。むしろIoTなしでは、生産性向上はなし得ないとも言えます。

具体的な役割について考えてみましょう。優れた生産システムとして、トヨタ生産方式があります。トヨタ生産方式の柱は、ジャストインタイムと自働化です。自働化については、にんべんがついていることを覚えておいて下さい。

ジャストインタイムとは「必要なものを必要な時に必要なだけ」準備することを指します。トヨタ生産方式でジャストインタイムを実現している方法としては、かんばんシステムがあります。かんばんシステムとは、使った部品の情報をかんばんに記載し、使った分のかんばんを発注し補充するシステムです。使った分だけ発注するため、ムダがありません。

ここまでは、トヨタ生産方式が書かれている本を読めばわかります。重要なのは、かんばんの枚数を何枚にするかです。かんばんが少ないと、在庫は減りますが、欠品が起こりやすくなります。逆にかんばんが多いと、欠品は起きにくいですが、在庫が増えます。

かんばん方式のポイントは、かんばんの枚数をどのような基準で最適にするかということです。かんばんの枚数を決めるのに、IoTが活用できます。

IoTで発注状況や部品使用状況や納品状況を把握することで、最適なかんばん枚数を決めることができます。さらには、設備の稼働状況も考慮して、発注量もリアルタイムにコントロールすることもできます。

産業用ロボットにおけるIoTやAIの役割

産業用ロボットにおける役割についても考えてみましょう。ロボットをインターネットに接続しビックデータを学習させるといった、高い投資をする産業用ロボット。停まっている時間が長いと投資効果を得られません。

IoTによって、実際に稼働している時間が容易に把握できます。生産効率を上げるために、稼働時間の短いロボットについて、さらなる活用が検討できます。また突然故障すると、復旧するまで時間を要することとなり、待機している時間がムダとなってしまうこともあるでしょう。

しかし故障する可能性を事前にわかっていたらどうでしょうか?IoTによって、モーターの電流値やアームの振動等を監視することで、予防保全ができます。

さらにAIを活用することで、人による判断ではなくAIシステムが異常の発生を予測し、必要な部品をロボットメーカに発注するため、予備品を持っておく必要がなくなります。

活用事例

IoTとAIについて、その他の活用事例を紹介します。

AIによる検査の自動化

AIの活用が最も期待できる分野が画像処理です。画像処理による、検査の自動化事例が多数報告されております。20年くらいまでの画像処理検査では、不具合個所の画像を登録して、検査で撮影した映像に同様の不具合個所がないかチェックしていました。

しかしこの検査方法では、登録した不具合個所しか検査できません。実際の検査は、それでは困ります。現在では、AIを活用した画像処理検査が実用化されています。AIを活用することで、良品条件を教え込み、良品以外は不良品と判定することができます。

良品画像と言っても、いろいろバラツキがあると思います。そこで、膨大な良品データをIoTで蓄積し、ビックデータによって基準を決めます。さらにカメラをロボットに取り付けることによって、これまで照明の影響があって、カメラを固定する必要があった検査を動的に行うことができます。

音声認識による作業

作業を効率的に行うには、両手をムダなく使う必要があります。そこで第3の手として、音声認識を活用した作業が可能となっています。

作業指示と言っても人にではなく、機械に対して音声で指示ができます。両手がふさがっている状態で「フタを開けて」と言うと、ロボットがフタを開けるといったような、音声認識によるロボット操作が実現できれば、今まで作業現場で働くことが難しかった人も働くことが可能となるでしょう。

実際にHmcomm株式会社は、自社が取り扱う音声認識エンジンをAWSの「AWS RoboMaker」に機能追加。このことにより人が発するあいまいな発言にも、自動的にロボット制御命令を補正し操作が行える、といった取り組みをしています。

まとめ

IoTとは何か、AIとは何か、ご理解頂けたでしょうか。AIを効率的に実現するために、IoTが欠かせません。また、AIも単体だけで活用することはできません。AIを活用するためには、ビックデータが必要です。

IoTで産業用ロボットなどから情報を収集し、ビックデータをAIで処理することで、はじめて人間にちょっとだけ近づきます。これまでAIについては、ハードウェアの問題で活用される機会がありませんでしたが、今はAIを活用できるハードウェア環境が整いました。

(画像はイラストACより)
(画像は写真ACより)