今回は産業用ロボットを初めて導入する方々にありがちな失敗要因である「産業用ロボット担当者の兼任化」について書いていこうと思います。
そもそも産業用ロボット導入時の考え方から誤っている方が多い
産業用ロボットを導入しようと考えている多くの方が「新しく導入する産業用ロボットは〇〇さんに兼任してもらおう」と考えます。
なぜそのような考え方に至るのかは人それぞれですが、多くの方の考え方の根底には「他の設備は多台持ちが出来ているのだから、産業用ロボットだって簡単に扱うことが出来るだろう」という考えがあるように思います。
産業用ロボット担当者を兼任にしてはいけない理由
さて、それではなぜ産業用ロボットは担当者を兼任にしてはいけないのでしょうか。
理由はずばり、産業用ロボットを最大限活かすための使い方がこれまでの専用機の使い方と全く異なるからです。
理由を解説します。
理由① 産業用ロボットはそもそも人手がかかることを前提とした機械設備であるから
産業用ロボットは実はJIS規格で下記のように定義されています。
産業用ロボットとは、自動制御され、再プログラム可能で、多目的なマニピュレータであり、3 軸以上でプログラム可能で、1 か所に固定して又は移動機能をもって、産業自動化の用途に用いられるロボット。
JIS規格票より
つまり、産業用ロボットとは「再プログラム前提で、多目的なマニュピレータである」と定義されており、再プログラムをすること、多目的なマニュピレータであることが前提となっている機械設備なのです。
一度入れてしまえば自由に動くという認識を持っている方もいますがこれは完全な勘違いで、産業用ロボットは導入した後に人で調整をかけてこそ活躍する機械設備なのです。
下記の図は“経済産業省 中部経済産業局 名古屋工業大学 産学官連携センター「産業用ロボット導入ガイドライン(P.2)」”より抜粋した図です。
※下記で説明する以外に産業用ロボットの強みはありますが、一旦分かりやすく下記の図を使用しています。
見ての通り、産業用ロボットは専用機と人手作業の中間に位置しています。
専用機ほどたくさんは作らないけど、ある程度の作業の複雑性までは対応できるのが産業用ロボットの強みと言えます。
具体的に我々が見てきた現場では産業用ロボットは下記のよう場所に使用されていました。
- 毎月定期的に一定量の受注があるワークを扱っている
- 買い付けた部材の公差に依らず、毎回同じ作業を行うワークを扱っている
理由② 兼任化させると産業用ロボットの調整を行わなくなるから
理由②は上記でお伝えしてきた内容に通じるところがありますが、産業用ロボットというのはこれまでの専用機等とは全く異なる機械設備であると認識してもらったほうが良いかもしれません。
イメージをお伝えすると、PCが出てきたときや、スマホが出てきたときに近いです。
PCが出てきたとき、多くの成人の方々は「手書きの方が早い」と認識し、PCでのメモを取る方は少なかったのではないでしょうか。
むしろ、今でも「PCのタイピングは遅い」と考えて、手書きのメモをしている方はいると思います。
しかし、PCのタイピングが早い人は手書きでメモをするより早くメモをすることが出来る人もいます。
産業用ロボットでも、これと同じことが起きているのです。
例えば、溶接作業一つとっても、これまで溶接を行っていた方に産業用ロボットを兼任してもらうと、
「なんだこれは。遅いし、調整がめんどくさいし、自分の手でやったほうが早いじゃねえか。」と思い、段々と産業用ロボットを扱うこと自体が面倒になってきます。
ただでさえそういった考えを持っているのに、次から次へと担当しないといけない案件も出てきて、もう産業用ロボットの調整なんて言っている場合じゃない、ということが現場ではよく起こっています。
この産業用ロボットの調整を専任化させると、産業用ロボットを扱わざるを得ないので、自然とティーチングに慣れてきます。
ティーチングに慣れてくると、PCのタイピングが早い方同様、産業用ロボットの扱いが億劫でなくなり、産業用ロボットの導入が上手くいきます。
産業用ロボットのティーチングは専任化させましょう
以上、ここまで読んでいただいていかがでしたか?
産業用ロボットの兼任化は、我々が実際に現場に足を運び見てきた失敗要因の上位トップ5に入ります。
これから産業用ロボットを導入したいと考えている人は、必ず産業用ロボットのティーチングの専任者を決め、導入を進めていってください。