知能をもたらす2つの仕組み
AIに知能をもたらす仕組みとして、大きく分けて機械学習とルールベースの2つの手法があります。
現在主流となっているのは機械学習です。機械学習は、AIが学習するための仕組みであり、ディープラーニングは機械学習を実現する手法の1つとして考えられています。
ルールベースとは、人間が事前に作成したルールや知識をコンピュータプログラムに組み込むことで、それらに基づいて予測や判断を行う技術です。

ルールベースとは
ルールベースのシステムにはいくつかのデメリットがあります。
例えば、大量のルールをプログラムする必要があるため、開発やメンテナンスに時間とコストがかかることです。また、複雑な問題に対応するためには大量のルールが必要であり、それらの管理が困難になることです。
一般的に、単純なルールで表現できる問題にはルールベースが適していると言えます。
AIの発展によって、ルールベースのシステムに取って代わる新しいアプローチとして主流になったのが機械学習であり、ディープラーニングです。

機械学習とは
機械学習とは、統計的手法やアルゴリズムを用いて、大量のデータからコンピュータが学習するための技術です。大量のデータを学習させた後に得られるデータのパターンや関係性を表現し、予測するモデルのことを「学習済みモデル(Pre-trained model)」と言います。
利用されるシーンとしては、スパムメールの自動分類、顔認識、音声認識、画像認識、自動運転などが挙げられます。
最初に機械学習に着目したのは、IBMの研究者であるアーサー・サミュエルでした(1959年)。彼は、機械学習を「明示的にプログラムされることなく、経験から学習する能力をコンピュータに与える学問領域」と定義付けました。
これは、従来のルールベースの人工知能に対し、コンピュータ自身がデータからパターンを見出し、予測や判断を行うという新たなアプローチを示し、機械学習の基礎となりました。現在は、機械学習は大量のデータからパターンを見出し、そのパターンを元に未知のデータに対して予測や分類を行う技術として、幅広く応用されています。

中小製造業のDXにおけるルールベースと機械学習の活用
それぞれの違いと使い分けについて解説してきました。ここからは特に中小製造業における機械学習の導入の可能性を考えていきます。
ルールベースと機械学習の違いと使い分け
ルールベースとは?
ルールベースとは、明確なルールを事前に定め、それに基づいて動作するシステムです。
例えば、
- 工場での単純な品質検査
- 特定の条件下でアラームを出すシステム
- 作業標準をもとにした自動化
このように、明確な基準がある場合にはルールベースが適しています。
機械学習とは?
機械学習は、大量のデータを基にパターンを見出し、予測や分類を行う技術です。
例えば、
- 予知保全(Predictive Maintenance)
- 機械のセンサー情報を学習し、故障の予兆を検出。
- ルールベースではカバーできない異常を識別。
- 生産計画の最適化
- 受注データや過去の生産データを分析し、最適なスケジュールを作成。
- Power AutomateなどのRPAと組み合わせて自動化も可能。
- 品質管理の高度化
- 画像認識技術を活用し、不良品検出を自動化。
- ルールベースでは対応しづらい、細かな欠陥の識別が可能。
- 需要予測
- 過去の出荷データや市場の動向を学習し、生産計画を最適化。
中小製造業のDXでは、まずルールベースで基礎を固め、徐々に機械学習を取り入れる戦略が有効です。
さらに具体的に Microsoft製品で考えてみる
実際に、Microsoft 365やPower Platformを活用したデジタル化を進めることで、データを蓄積・活用しやすくなります。その上で、機械学習を活用することで、さらなる業務改善が可能となります。
例えば、
- Power BIでのデータ可視化
- Power Automateによる業務自動化
- AI Builder(Power PlatformのAI機能)を活用したOCRや異常検知
こうしたツールを活用することで、中小企業でも手軽に機械学習の恩恵を受けることができます。
まとめ
現在のDX推進の流れでは、ルールベースと機械学習の両方を適材適所で使い分けることが重要です。
短期的な効果を出すためにはルールベースを活用
長期的なデータ蓄積を経て機械学習を導入
中小製造業のDX推進において、まずはデジタル化の基盤を整え、次のステップとして機械学習の活用を検討するのが賢明なアプローチです。
今後、どのように機械学習を活用していくか、戦略的に考えていきましょう!