2023年5月29日、デロイトトーマツコンサルティング合同会社は株式会社smart-FOAの資産を譲受し、パッケージサービス「FOA-Agile」の提供を開始した。工場経営ニュースでは、過去に株式会社smart-FOAの奥雅春氏を取材している。

今回はデロイトトーマツコンサルティング執行役員の芳賀圭吾氏に、同社が取り組む製造業支援やスマートファクトリーとFOA-Agileの関連性などのお話を伺った。

デロイトトーマツグループの取り組み

昨今、ものづくり分野におけるデジタル化の進展は目覚ましく、業界のあり方自体もデジタルを活用した新しい姿に変わりつつある。デロイトトーマツグループでは、これまでも経営戦略やビジネスモデルなどの幅広い分野で製造業のお客様の支援を行ってきた。芳賀氏は、「製造業のお客様向けには、IT中期計画を立てた業務改革、昨今でいうDXをどういう方向でやっていくかというご支援は以前から取り組んでいました。また、サプライチェーンマネジメントやビジネスプロセスレベルのご支援を行ってきた」と話す。

製造業の領域を専門としてきたわけではないものの、デロイトトーマツグループの強みである人事・人材領域のノウハウを活かし、デジタルを中心としながら新しいものづくりの姿を描き、組織実現していくことを目指している。「(製造業で働く)皆さんが、いきいき働いて企業として競争力を上げていくために、製造業への支援が必要(話:芳賀氏)」だという。

デロイトトーマツグループが行う製造業支援の新しい取り組みの1つとして、「スマートファクトリー」がある。デロイトグループが世界でスマートファクトリーに取り組み始めたのは、2017 年のドイツが最初だ。その後2019 年頃から国内でも研究チームが立ち上がり、2021年に国内最初の施設が京都に置かれ、2023年には東京にも開設された。これまでの取り組みを踏まえ、現状以上に製造の現場にもう一度踏み込んでいき、本当のものづくりの切り口から取り組みを行っていくという考えがあったという。

同施設では、訪れた方が実際にテクノロジーを活用した業務を見ながら、未来の工場の姿をイメージすることができる。「単なる効率化や自動化、無人化ではなく、現場で起こっている様々な事実や情報から問題解決に向けた次のアクションを考えていく(話:芳賀氏)」ことを大切にし、単なるショーケースではないスマートファクトリーのモデルを設置している。

スマートファクトリーとFOA-Agile

国内でスマートファクトリーを実現したモデル施設を開設するにあたり、そのコンセプトや採用する技術、具体化に向けたパートナーなど様々な議論が行われた。検討を行うメンバーの中に、株式会社smart-FOAの奥社長と 10 年近く取り組みを共にするメンバーがいた。彼はsmart-FOA社の理念やFOA-Agileの事例に詳しく、これをきっかけに「現場の事実情報をデジタル化して、組織の中に事実として提供し活用する」スマートファクトリーのコンセプトが生まれた。これに対して芳賀氏は、「我々としてもユニークな取り組みですし、日本の製造業の皆さんがもっとチャレンジすべきところだと思いました。そういう中で単なるアライアンスやプロダクトの提供だけではなく、もっと深く一緒にやらせていただきたいと考えました」と話す。

FOAという考え方は業界では知られた概念である。その最大の特徴は、データだけでは見えにくい事象に対して、その背景(=説明情報)を加えた1 次情報を基本的な1つの単位として捉えようという考え方にある。IoTなどの様々なテクノロジーによって現場から集積されたデータを、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)の情報や基準・計画に照らし合わせた時に、どのぐらい良いのか悪いのかを含めて1つのデータとして扱っていく。これにより、現場で得られた情報が、速やかに組織の中に伝わり、現場で働く人以外にも正しく状況が伝達できる。その結果、組織のデータに組織の言葉でタグが付けられ、共通認識を得た状態で改善に向けた議論ができるようになるのである。

FOA-Agileの特徴(デロイトトーマツグループHPより引用)

「FOA-Agile」を活用することで、フレキシブルに現場の改善を行うことができ、スピーディな問題解決に取り組むことが可能になる。また、重要な部分から導入して徐々に拡張したり、特定の箇所を一時的に運用停止して改善を行い、完了後に再度導入したりするなど、自律分散的に現場の改善を行うことができる仕組みなのだ。また、データを活用した改善活動の工数を削減できることも大きな特徴である。例えばある製造機械があり、その稼働状態や検査結果、条件など様々なデータを見ながら管理しているとき、一般的にはそれぞれのデータをセンサーからIoTのプラットフォーム上に集約し、タイムスタンプなどを基にデータをつないで分析できる状態にしている。その他、生産計画や他の生産機会との兼ね合い、品質のデータなどを別で集約すると、これらのデータを整理することにかなりの工数がかかる。

一方でFOA-Agileは、小さな工程単位でデータを集積する。1つの工程の中で、情報が生じる全てのタイミングで様々な情報を取りまとめており、そこからデータとして整理される。そのためデータを活用してどのように改善を行うかは、現場スタッフに比較的自由に任せられる。小単位で導入できることから、各企業が重点管理工程と位置付ける工程など、事前に定義されたものではなくできるところから柔軟に導入し、様子を見ながら徐々に拡大していくことが可能である。そのためFOA-Agileは中小規模の企業でも柔軟に導入することができる点も大きなポイントと言えるだろう。

デロイトトーマツグループが描くビジョン

これまで以上に大きく変化・変動している社会において、これまでの30年とこれからの 30 年では全く異なると想像しているという。世の中の社会構造が変わっていく中でデロイトトーマツグループでは、「労働者人口が減っていく中で様々な方が新しい仕事にチャレンジしていく中で、様々課題・問題にぶつかります。そこをしなやかにアジャイルに乗り越えていき、日本の製造業皆様がもう一度グローバルでの競争力発揮していただける状態になる。またその中では若い方を含め様々な年代の方にとって製造業が楽しい事業・仕事であるということを意識しながら取り組めるようになって欲しい(話:芳賀氏)」という思いがある。

また芳賀氏は、「私としては、製造業に従事される方々が新しい価値を常に見出し続けられる、そのような企業のあり方を作っていきたいですし、そのためにマネジメントはどう考えたら良いか、組織はどうなるべきか、人材育成はどうしたいのかということも含めて考えています。関係する政府や官公庁、教育機関、金融機関など様々な方が製造業に関わって日本の社会ができているので、新しい社会の形を開く 1 つの触媒のようになれたら」と話す。「大企業だけではなく、中小企業の皆さんも含めて製造業が元気になっていただく。そのために不可欠なスマートファクトリーやFOAの考え方を、地域のクラスターの中で共有化して使っていただくようにするためにどうするか、そんなことも含め、日本の製造業をもう一度押し上げていくご支援していきたい(話:芳賀氏)」そうだ。

回答者のご紹介


    お問い合わせ

    お問い合わせは各お問い合わせページより受け付けております。
    お問い合わせの内容に合わせて、デロイトトーマツグループまたは弊社までお問い合わせください。

    |工場経営ニュース|
    お問い合わせ
    記事に関するご質問はこちら
    |デロイトトーマツグループ|
    お問い合わせ
    内容に関するご質問はこちら