弊社ではDXを推進する際の区分として、フェーズに応じて「守りのDX」と「攻めのDX」という表現をしています。これからDXに取り組む多くの企業さまでは、IT活用や業務効率化、生産性向上など社内の改善を行う「守りのDX」から取り組みを開始します。

社内業務のDXが進んだのち、社外向けにデータを活用した製品改善や新規事業の立案といった「攻めのDX」に取り組みます。本記事では「攻めのDX」の新規事業の推進を支援している、株式会社メタモルフォーシスの岩崎社長にインタビューを行いました。

株式会社メタモルフォーシス・岩崎 桃子の経歴

新規事業立ち上げから、政府案件までを手掛けるオールラウンダーなコンサルタント。​
日興アセットマネジメントにて内部監査、KPMG、グラントソントンで移転価格税制のコンサルタントに従事。その後Mode-Innovations(英)の日本法人社長を務め独立。2019年パルシファル設立、2020年短期議員秘書としてIT戦略の旗振り、その後コンサルタントとしてMS&ADインターリスク総研の新規事業に参画。
2023年インターフュージョン・コンサルティングに入社、グループ子会社である(株)メタモルフォーシスの代表取締役。​

「国策」という観点から新規事業を客観視する

ーー岩崎社長が新規事業を支援される際は、「国策」という観点から事業を見ていらしゃるとお聞きしました。この「国策」とはどういうものでしょうか?また、なぜ岩崎社長は「国策」を通して新規事業を考える必要があるとお考えなのでしょうか?

ベンチャー、新規事業創出者にとっての願いの一つに、プレゼンスを築く(存在感・影響力を高める)ことというのは必ずあると思います。そのためには自分の立ち位置を可能な限り正確に把握することが必要です。さらにそのためには、多角的な視点からの検証が必要です。

国策とは文字通り国家が決定する政策のことです。
政策を定めるには、多くの研究期間や検討会、審議に多くの時間を費やします。そして報告書が提出されていますので、我々国民が、内容を検討することは自由ですし、情報を追いかけていくことも可能です。ステークホルダーの把握も大切です。もちろん、国策が全て、現在の日本の課題を100%網羅・把握してると言い切ることはできませんし、分野によっても把握状況に差はあります。

しかし、この国の「何」が「どこ」へ向かって行こうとしているのか、特に産業分野の課題に関して、予算のついているものに関して、どのようなK P Iが掲げられ、どんなステークホルダーが参加しているのかを分析することは、し尽くしても無駄はないと考えています。

どのような事業者さんにとっても、大切な情報ですし、必ず自分たちの事業との接点が見つけられるものです。国家の源流の理解が深まれば深まるほど、自分たちの事業に対して客観的になれる部分はあると思います。

今の注目は「新しい資本主義のグランドデザイン」

ーー岩崎社長が日々国策に関して情報収集をしている中で、近頃特に注目を集めており国も積極的に取り組んでいると考えておられるのはどのような産業でしょうか?

主に「GX(=Green Transformation)」と「スマートシティ(デジタル田園都市国家構想)」の2つの分野に意識が向いていると感じています。

「GX」は近年よく聞かれるようになりましたが、契機となったのは2015年にフランスで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)です。この時、2020年以降の温室効果ガス排出削減等のための新たな国際枠組みであるパリ協定に調印し、カーボンを減らすことを宣言しました。
そのため、経済産業省や環境省、国土交通省等が中心となって法制度の整備など政策を進めています。世界的にも、今後は二酸化炭素の排出とエネルギーが注目されていますよね。

ここ数ヶ月で、日本はGX投資に関するスキーム整備に動きが出てきました。今後10年間で官民合わせて150兆円を超える投資を実現して経済成長へと繋げると岸田政権で宣言し、「GX経済移行債」を20兆円を調達し、本格的なカーボンプライシングを実行していくとしています。

J-クレジット等の取引は、市場規模が小さく、国としてのレギュレーションの整備不足から市場を魅力的なものとして投資家にアピールできていません。そういった危機感に対して岸田政権は本腰を入れて国として取り組んでいく姿勢を打ち出し始めました。

脱炭素の技術的な開発競争で日本はプレゼンスを海外に示せていません。そこで我々としては、革新的な技術を大手企業や国からの協力を得て、純国産のオフセット理論の明快なソリューションの確立に特に力を入れています。これはとても魅力的な案件だと思います。

「スマートシティ(デジタル田園都市国家構想)」も脱炭素に大きく絡む政策です。スマートシティとは下記のように定義されています。

スマートシティは、ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域であり、Society 5.0の先行的な実現の場と定義されています。

内閣府 「スマートシティ」  https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/

この政策では、IoTを活用した実証実験が国内各地で数多く進められている他、省力化、省エネ、防災、モビリティなど、国としてやらなければいけないことを全て盛り込んだ実証実験が行われています。
例えば、東京都では東京駅、大手町、有楽町エリアを1つのスマートシティとして実証実験が行われています。このエリアでは省エネモビリティに関する取り組みや、人の流れをビッグデータ化して分析することで、防犯などに活用する取り組みの検証が進められています。

これらの取り組みは、岸田政権が実現を目指す「新しい資本主義」政策の一部でもあります。そのため現在の国策は、新しい資本主義のグランドデザイン(=全体構想、基盤)に焦点が向いている状態です。

国は常に「海外資本を呼び込める技術」を探している

ーー企業が国と一緒に新規事業に取り組む理由はなぜでしょうか?また、岩崎社長は国と協業できる企業の特徴をどのように捉えているのでしょうか?

国策を踏まえた新規事業に取り組むのは、私としてはクライアントさんにとってのアドバンテージを作るためだと考えています。
大手企業が国とのプロジェクトに参加する理由は、自分たちが参画することでつながりを作るためです。大手企業には「公共事業部隊」があり、売上ではなく国と繋がることを目指し、情報を仕入れて下流でビジネス化する仕組みがあります。参加して情報収集、繋がりづくりをすることが目的のため、体力がなければできないためスタートアップでは難しい取り組みですね。

また、資料を見ていくと、当然国も真剣に考えてさまざまな戦略を練っていることがわかります。この戦略に合致する技術を有していることを前提に、企業の技術を国の戦略に反映してステークホルダーになるためには、企業自身の想いや意識が1つ重要です。企業自身が「この国を強くしたい。日本を良くしたい」という強い思いは重要です。

国としては、どの企業に頼んでどの道筋で進めば早く成果が出るのかを意識しています。その成果とは、海外から資本(お金)を呼び込めるかで、すなわち、国の最終的な落とし所としては、我が国日本のマーケットにどれだけ海外投資家がお金を落としてくれるかということになります。こうした国の思惑を実現できる技術力を持った企業を国としては常に必要で、そこはキーマンとオープンにやり取りできるスキームを弊社は大切にしています。

時間と信用で「素早く有益な繋がりを提供する」

ーー最後に岩崎社長ご自身について教えてください。岩崎社長が、お仕事をされるうえで大切にされていることは何でしょうか?

譲れないところは「スピード」、すなわち効率的な実行支援を行うことです。多くのコンサルティング会社は、情報収集・分析する会議に時間を割きすぎていると感じています。それが悪いことだとは思いませんが、その間に世の中は次々と変化してしまいます。私のお客様は、一刻も早く投資をしてもらいたいベンチャー企業のため、机上の議論に時間をかけすぎないようにしています。

また、人に会うことを重視して、実際に見に行くことも大事にしています。Excelと睨めっこしてデータを分析しても、あくまで机上の正解ロジックで、判断の一材料にすぎないのですが、そこで臆病になってしまうと何も生まれないと思っているため、フットワークを軽くしておくこと、直接行って顔を見て話をしたり、デモ機を見せたりして話をするようにしています。

この「対話」によって事業が生まれるため、人間として信用されなかったら当然終わりだという意識は持っています。

弊社Metamorphosisや親会社のインターフュージョンから「話をしたい」と連絡がある時は、関係者や役員がすぐに集まってくださいます。それは、弊社や私たちがこれまでに信用を築き、我々から連絡があるときは「ニーズの高いものだ」という考えをお持ちいただけているからです。こうした信用を失わないためにも、クライアントになっていただく企業もしっかりと調査し、国に対して提案できる技術なのかは、自分も日々の情報収集のアンテナを高くして、学び続けること、好奇心も大切かと思います。


会社紹介

株式会社Metamorphosis

本社:〒108-0014 東京都港区芝4-13-4 田町第16藤島ビルhttps://www.metamorphosis.jp/%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E6%A6%82%E8%A6%81/

(親会社)株式会社インターフュージョン・コンサルティング

〒108-0014 東京都港区芝4-13-4 田町第16藤島ビル
https://www.interfusion.jp/

親会社である株式会社インターフュージョン・コンサルティングの奥井会長が、オクイアンドアソシエイツから独立。省庁(防衛省、財務省、厚労省など)またはレジェンド企業をクライアントとし、党の派閥から国会にあげる案件の案件づくり等も引き受けている。
省庁の案件作りの実績及びIT関係企業を束ねてきた経歴、またデータ系の一般社団法人を束ねている実績があったため、政策系デジタル系で一番のコンサルティング会社に。
株式会社Metamorphosisは、親会社同様政府案件を扱うものの、ベンチャー企業に特化したコンサルティング会社である。

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