ISOとは
ISOとは、国際標準化機構(International Organization for Standardization)の略称です。本部がスイスのジュネーブにある、日本を含む世界165ヵ国が加盟する非政府機関です。
ISOの主な活動は、国際規格を制定することです。国際規格に準拠した製品やサービスを開発してISOの認証を受けることで、世界中のどこでも同じ品質の製品やサービスを提供できます。
製品やサービスだけでなく、組織の品質管理や環境活動などを管理するための仕組み(マネジメントシステム)についてもISO規格が制定されています。
品質管理に関するISO9000シリーズは、すべての製品やサービスを提供する工程で実施すべき品質マネジメントシステムを構築して、適切に運用していくために制定された規格です。
ISO9000シリーズの中で、製品・サービスの品質の持続的な向上を目的としているのがISO9001です。企業がISO9001の認証を受けることは、世界基準の品質保証体制が確立されている証明になります。
品質マネジメントの7原則
ISO9000シリーズに基づいて作成された日本工業規格(JIS)の”JIS Q 9001:2015「品質マネジメントシステム―基本及び用語」”によると、品質マネジメントには以下に掲げる7つの原則が定められています。
顧客重視
品質マネジメントの主眼は、顧客の要求事項を満たすこと及び顧客の期待を超える努力をすることにある。「品質マネジメントシステム―基本及び用語(2.3.1 顧客重視)より」
企業を含む組織には現在の顧客の要求を把握して満足させるだけでなく、将来にわたって顧客の期待を上回るように努力を継続することが求められます。
条文中の「顧客」は最終的な消費者となるエンドユーザーだけでなく、製品やサービスの供給に関わる「内部顧客(組織内の担当者)」も含まれます。顧客重視は、ISO9001で最も重要視されている原則です。
リーダーシップ
すべての階層のリーダーは、組織の目的及び目指す方向を一致させ、人々が組織の品質目標の達成に積極的に参加している状況をつくり出し、維持するべきである。「品質マネジメントシステム―基本及び用語(2.3.2 リーダーシップ)より」
ISO9001では、品質マネジメントの責任は組織のリーダー(トップ)が負います。リーダー自らが品質マネジメントシステムの構築・実施に主体的に取り組み、システムの有効性を評価して向上を図っていくことが求められます。
ISO9001の品質マネジメントシステムにおいては、トップが明文化した「品質方針」によって組織の方向性が決まります。品質方針は組織内部に伝達するだけでなく、顧客からの信頼を確立するために外部にも明示することが大切です。
ISO規格では、「有効性」という言葉が頻繁に出てきます。有効性とは、単に仕組みやルールがあるだけではなく、目的を達成するためにそれらが正しく機能していることを意味します。
人々の積極的参加
組織内のすべての階層にいる、力量があり権限を与えられ積極的に参加する人々が、価値を創造し提供する組織の実現能力を強化するために必須である。「品質マネジメントシステム―基本及び用語(2.3.3 人々の積極的参加 )より」
品質マネジメントシステムは、トップだけが行うものではありません。トップの「品質方針」に沿って、組織全体で参加することが求められます。トップは組織の役割と権限を明確にし、顧客満足を高めるという目標に向かって構成員が何をすべきかを考えて実行しなければなりません。
組織には構成員の力量を適切に評価し、計画的に各々の力量を高めていく取り組みが求められます。
ISO規格で使われる「力量」という言葉は、構成員一人ひとりのスキルや資格のことを意味します。
ISO9001では、組織が構成員の力量を正しく判断して管理することが求められます。重要な業務については、一定のレベル以上の力量がある構成員に担当を割り当てることが大切です。
プロセスアプローチ
活動を首尾一貫したシステムとして機能する相互に関連するプロセスと理解しマネジメントすることで、矛盾のない予測可能な結果が効果的、効率的に達成できる。「品質マネジメントシステム―基本及び用語(2.3.4 プロセスアプローチ)より」
プロセスアプローチとは、組織内の仕事の流れを業務単位で管理することです。ISO9001では、仕事の流れ(プロセス)の管理が重要視されています。プロセスに「無駄な作業が発生していないか」や「ミスをするところはないか」などを、定期的に組織内で確認しなければなりません。
上記の問題を明確にし、改善することで製品やサービスの品質を高めることができます。そのためには一連の業務プロセスに正しい手順やルールを定めることが必要です。
改善
成功する組織は、改善に対して、継続して焦点を当てている。「品質マネジメントシステム―基本及び用語(2.3.5 改善)より」
「顧客重視」の原則に従って品質を高めるためには、常に改善が求められます。問題があるときだけでなく、問題がないときにこそ改善点がないか検討することが重要です。ISO9001で顧客重視と同じくらい重要なのがPDCAサイクルです。
PDCAサイクルとは、Plan→Do→Check→Actionの略で、PDCAサイクルを回すことは、継続的な改善を行うことにつながります。
客観的事実に基づく意思決定
データ及び情報の分析及び評価に基づく意思決定によって、望む結果が得られる可能性が高まる。「品質マネジメントシステム―基本及び用語(2.3.6 客観的事実に基づく意思決定)より」
組織が目標をクリアするためにはさまざまなデータを分析して客観性のある事実を割り出し、正しい情報を根拠にした意思決定を行うことが必要です。
トップの個人的な経験や勘に頼らずに、客観的なデータに基づいてマネジメントシステムの改善を行いましょう。正確なデータを蓄積することが、目標とするゴールへの到達を可能にします。
関係性管理
組織は、持続的成功のために、たとえば外部提供者のような利害関係者との関係をマネジメントする。「品質マネジメントシステム―基本及び用語(2.3.7 関係性管理)より」
本来的に、組織と外部の利害関係者の立場は対等です。顧客重視とは、「お客様は神様」とする一方的な主従関係を作ることではなく、相互に利益を享受できる関係を構築することです。
顧客と良好な関係を築いた上で、顧客満足度を高める努力を継続しましょう。また、仕入れ先や関係企業との良好な関係を築くことも、品質マネジメントを行う上で重要です。
まとめ
ISO9001の認証は、自社の品質マネジメントシステムが規格の要求事項を表面的に満たしているだけでは取得できません。
認証を受けるためには、品質マネジメントシステムの有効性も含めて審査に合格する必要があります。しかも、定期的に審査に合格しなければ認証を取り消されてしまうため、適切なシステムの運用に努めなければなりません。
品質マネジメントシステムを適切なレベルで維持するためには、常にPDCAサイクルを回すことが大切です。ISO9001の7原則について理解を深め、世界基準の品質マネジメントシステムを構築しましょう。
(画像は写真ACより)
▼外部リンク
一般財団法人 日本品質保証機構
https://www.jqa.jp
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