品質管理は工場の要(かなめ)

製造業では、QCD(quality、cost、delivery)の三本柱がよく取りざたされます。顧客の要求にこたえるためには、納得できるコストと適切な納期が重要なのは言うまでもありませんが、最もないがしろできないのがqualityに当たる「良い品質」です。

工場では毎日のように人的ミスや機械の故障などのトラブルが起きるので、ただ単にモノを作っているだけでは、顧客の期待を満たす「良い品質」を常に提供するのは至難の業とも言えます。そのため、日々のトラブルをコントロールし、ムラのない100%の品質を保つ手法が必要となります。

そこで登場するのが品質管理(QC)という考え方です。品質管理とは、顧客により良い製品を提供するためのマネジメントとなります。

品質管理を実行することで達成できるものは顧客満足ばかりではありません。品質が安定することで不良品が減れば使用材料も少なくなり、検査費の削減ができます。また、品質を一定にすることは、作業のマニュアル化を推し進めることでもあるため効率化も期待できます。

では、QCはどのように運用していけば効果的なのでしょうか。QCで大事なのは経験や勘に頼らず事実やデータに基づいた管理です。

統計的に管理していくための手法として広く普及しているのがQC七つ道具というものです。

QC七つ道具とは

QC七つ道具とは、品質管理の基本的な手法で問題解決のためのアプローチとして有効であり、次の七つを指します。

・パレート図
・特性要因図
・グラフ(管理図)
・チェックシート
・ヒストグラム
・散布図
・層別

QC七つ道具のポイントは、工程異常を数値やデータとして視覚的に捉えることができるため、物事をイメージしやすい点にあります。つまり、日々発生する不良品の実態をデータに落とし込んでやれば、どこに問題があるのか掴みやすくなり改善に移すことができます。

QC七つ道具はそれぞれ目的に合わせて使い分ける必要があります。まず現状の実態を把握したい場合にはヒストグラム、チェックシート、管理図となります。問題の原因を分析したり絞り込んだりするには特性要因図、パレート図、層別です。原因と結果の間の関係を明らかにしたいときには散布図を使います。

QC7つ道具とは別に、数量化できない言語データのような定性面から分析を行う「新QC七つ道具」があります。

新QC7つ道具についてはこちら

QC七つ道具の種類

次にQC七つ道具について解説します。くわしい作成の仕方については省略しますが、どんな使い方をするのかを説明していきます。

パレート図

パレート図は、工程に影響を与えている主な要因をあきらかにするためのQC手法で、七つ道具のなかでは比較的簡単にグラフにできます。作成するには外観不良などの不良項目を大きい順に棒グラフで並べて、棒グラフの上に累積比率を順番に折れ線グラフでつなぎます。

パレート図でわかることは、一つ一つの不良項目が全体のなかでどのくらいの割合を占めているかです。いわゆる「ニッパチの原理」に基づけば、問題の8割は2割の原因によって発生します。したがって全部の不良項目に対策を打たなくても、たった2割の不良原因を改善するだけで8割の効果が得られます。

by FabianLange at de.wikipedia / GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)

特性要因図

魚の骨によく似ている図なので、フィッシュボーンとも呼ばれるのが特性要因図です。

魚の頭にあたる部分には解決したい問題を置き、問題の原因となるものを魚の骨にします。魚の骨は大骨、中骨、小骨と段階的に掘り下げていき、最終的には主となる原因を特定していきます。

原因の入り口にあたる大骨は人(Man)・材料(Material)・機械(Machine)・方法(Method)の4Mを意識して考えるといいでしょう。

特性要因図は、複雑に絡み合ってごちゃごちゃとした原因を整理するのに非常に有効です。QCサークルを結成して複数人で取り組むと、より効率的に問題点を追求できます。

by Snp at de.wikipedia / GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)

グラフ(管理図)

グラフは日々の生産実績をデータとして視覚的に表したものです。なかでも重要な管理図は、製造状況が正常か異常かを客観的に判断することができます。

管理図は何種類かありますが、代表的なものがX-R(エックスバー・アール)管理図です。あらかじめ管理限界線を定めておき、測定結果を打点し折れ線グラフでつないだものになります。

製造で発生した不良数を管理図にしたい場合を考えてみましょう。まず不良数の平均値を中心線とし、上と下の管理限界線を引きます。そして日々の不良数を集計してグラフに打点して、つないでいけば完成です。

これにより工程に異常が起きていないか日常的に確認することが簡単になり、不良が多い日にはなにか原因がなかったか検証できます。

by DanielPenfield / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)

チェックシート

問題をしっかりと把握するには事実が欠かせません。チェックシートは製造中にチェックした事実を記録するための用紙のことです。

製造中にチェックする項目はさまざまな種類があるため、チェックシートは二つに大別します。製造数や不良の内訳など毎日の品質を記録したものは「調査・記録用」、設備に異常がないか始業時などに点検するものは「点検・確認用」となります。

もれなくデータを取るためにはチェックシートが元となるため、どれをチェック項目とするべきか精査する必要があります。

ヒストグラム

ヒストグラムは横軸に測定値、縦軸に発生数量や頻度をとり棒グラフで表します。

例えば電子部品の抵抗値を測定したとします。規格が100Ωだとしたら、99Ωを示すものもあれば101Ωを示すものもあります。同じ電子部品でもすべてが同じ測定値になることはまずなく、多少のばらつきが発生します。

そのばらつきがどの程度なのかをイメージするのにヒストグラムが活用できます。全体の中心位置とばらつき具合がわかるため、データの全体の姿を視覚的に捉えられるというメリットがあるのです。

良く管理された工程のヒストグラムは、発生数量が中心付近が最も高くなる山のような形をしていて、左右対称となります。

by Kierano / CC BY-SA (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)

散布図

散布図とは、横軸と縦軸が書かれていて、そこに測定結果を打った点が散らばっている図のことです。二つのデータの関係を調べるときに用いるQC手法で、おもに原因と結果の関係が分かります。

散布図では横軸が増えるにつれて縦軸も同じように増えていけば、二つの間に「正の相関」があるとわかります。その逆に横軸が増えるにつれて縦軸が減っていくとしたら、「負の相関」があります。

自動車部品に色ムラという不良があった場合に、色ムラと関係のあるデータがなにかを調べるのに散布図が有効です。例えば室温が低くなるとともに、色ムラが発生する数が増えていけば両者には相関がある言え、色ムラを減らす対策に室温が重要だということがわかります。

by KENPEI at de.wikipedia / GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)

層別

層別とは、グループごとにわけて考えることを意味します。

不良のデータが、「何時のものか」や「どの機械のものか」などグループ分けをして比べてみると見えるものがあります。

問題があった際にデータを見ても原因が分からない時には、場合に分けて考えることも重要です。

まとめ

QC七つ道具は良い品質をつねに生み出すために欠かせない手法です。管理に当たってはPDCAサイクルを回すことが重要ですが、その際に計画を立案し、効果があるのかチェックするにはQC七つ道具が必要だからです。

最近では品質管理について網羅したQC検定という資格もあるので、会社の従業員のスキルアップのために受験させることも検討してはいかがでしょうか。

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(画像はACより)
(画像はWikipediaより)